AINU ART – 風のかたりべ|北海道立近代美術館

20130314 01 AINU ART   風のかたりべ|北海道立近代美術館
AINU ART ―風のかたりべ
に行ってきました。
当初は先月行く予定だったんだけど、スケジュールしてた日の前日が休日だったため、まさかの美術館振替休日が出発直前に発覚。行く前に気がついたから良かったものの、もし気付いて無かったら勝手に腹立ててたところでした。
というわけで一ヶ月遅れでやっとこさ観てきたメモ。

恥ずかしい注意を受ける

もちろん写真なんて取るつもりは無かったんだけど、展示エリアではデジタルデバイスを弄る事事体駄目なんですね。メモ帳を忘れたのでiPhoneでEvernoteにメモを取ってたのですが、ものの数分で学芸員さんに注意されるという恥ずかしい事態に。事情を説明したらメモ用紙とペンを貸してくれたのでその後はメモ帳片手に観ておりました。学芸員さん、ごめんなさいでした。

メモをメモ

以下、作品を見ながら書いてたメモをベースにした感想です。

イクパスイの進化に見るアイヌアート

イクパスイとはアイヌ民族が儀式で使用する木製の祭具です。
イクパスイ – Wikipedia
モチーフはさまざまで、熊や狼などの動物、住んでる家や狩り/漁などの生活の様子、アイヌ独特の抽象図など、長さ20cm、幅2,3cm程の板の中に当時の暮らしや物語が垣間見えます。また、時代の経過と共に装飾にも多様性が出てきて、中には分岐した枝をうまくデザインに取り入れたものや、あえて曲がった木を使っているものなどもあります。さらに2000年代に入ると、一本の木から切り出したにも関わらず個別のパーツで構成された鎖状の装飾が施されたものなど、技巧的にも非常に高度になっています。
もちろん後期のものは技術的に素晴らしいものではあるのだけれど、個人的には昔の古い装飾が「いかにも」という感じで好みです。アイヌのアートは儀式などをを含む彼らの生活文化や様式そのものに良さがあると僕は感じていて、アートを目的としたアートよりはむしろ「日々の暮らしが結果的にアート性が認められたよ」という考えです。なので「よし、アイヌアートやるぞ」と、テイストを全面に出しながら作られている今のアートは実はあんまり好きではないかもしれない、と今回の展示で感じました。

たばこ入れ

木で出来た刻みたばこケース。喫煙具である煙管(キセル)差しも縄で繋がれており、葉と喫煙具がセットになっています。装飾にはアイヌ独特の彫刻が施されていて、同じものは二つとありません。というか、当時のものは全部そうか。

松井梅太郎の木彫り熊

北海道土産で有名な木彫りの熊も、発祥はアイヌ。
正確にはいくつかのルーツがあるそうなのだけど、その一つに旭川で熊ハントをする松井梅太郎という人が始めた流れがあり、その初期作品も観る事ができました。それがね、今の木彫り熊と全然違ってて、正直笑ってしまいました。端的に言うと下手なんですよ。熊というよりも豚に近い。いやいや、ほんと。言い過ぎでもなんでもないです(疑うならば自分で観に行ってください)。その出来栄えについて馬鹿にする気はまったくないのですが、やはり最初から完成されたスタイルというのはなかなかないのだなぁと改めて感じました。まぁリアリティだけがアートの指標ではないので「下手」という表現自体が適切ではないとは思いますが、そこを加味してもこれはどうよ、という出来映え。もちろん時代の流れとともに少しづつ今のようなスタイルに近づいていき、途中からシャケを咥え始めます。

チカップ美恵子

アイヌ独特の模様刺繍を施した布や民族衣装の作り手。2000年代の作品も多数あり、最近のものはモダンなアプローチが取り入れられているものも多かったです。基本的に布類にはさほど興味はなかったのだけど「アパッポ 花シリーズ C (1996)」という作品がすごく綺麗でした。濃紺のビロード生地に紫からピンクに繋がるグラデーションで花をモチーフにした刺繍が施され、刺繍生地というよりもグラフィックデザイン的な美しさが感じられました。

床ヌブリ

木彫り熊(1974)
ボリューム感と毛皮のテクスチャーが力強い。実際には細かく彫られているわけではないのだけれど、少し離れて観ると生き生きとした毛の動きが感じられる。彫り込むというマイナスの作業で立体感というプラスの表現をする技術というのは本当に素晴らしい。

ユーカラクル(1982)
ユーカラクルとは「語り部」の事。アイヌの部落における語り部がどんな役割を担っていたのかは分からないけど、同じタイトルで2つあったユーカラクルはどちらもオーストラリアの先住民であるアボリジニの長老が思い出される。時代や土地、文化や民族が異なってもおじいちゃんの存在ってのは似たり寄ったりなのかなぁなどと考えながら観てました。

藤戸竹喜

モチーフの対象としてアイヌに関わりの深い熊や狼を選んでいるけれども、その作品には「アイヌらしさ」はさほどなく、絵画でいうと写実的な作風。とはいえ個人的には今回の展示作品群の中で一番好きだなぁと感じた作家です。絵画にしても彫刻にしても、写実寄りなのが好みなのですね、僕は。よくわかりました。

狼(2005 ニレ)
今回の入場チケットデザインにも使われている作品。

ヤシガニ(1995 イチイ)
リアルすぎて気持ち悪い。部屋に置いてあったら怖くて作品の方に目を向けられない。

こぶセミエビ(1997 イチイ)
ヤシガニを上回る気持ち悪さ。こちらについては部屋に置きたくもない。

親小熊(2004 クス)
やんちゃな小熊と優しいまなざしのお母さん熊のセット。熊って怖いのに、なぜこういう愛情表現をテーマにした作品が多いんでしょうね。不思議です。

白熊親子(1999 クス)
こちらも熊の親子。白熊って泳ぐから首から胴に掛けてが直線的なフォルムになってるんですよね。旭山動物園で白熊観た時に首の太さに驚愕しました。ミルコのハイキック受けてもびくともしなさそう。

四季(2004 クス)
これはかわいい。多分沢山の人がそう感じたと思います。親小熊の生活を四季に分けてそれぞれ作品化しています。
春は冬眠から出てきた熊の親子がふきのとうを食べているところ、夏は川でザリガニ採集、おかあさんは河原の石をひっくり返して、採り方を子供達に教えています。秋はもちろん故郷の川に遡上する鮭を補食するところ。そして冬は冬ごもりの様子。穴のなかでだるっとして子供達におっぱいを上げているおかあさん熊が優しい。

ふくろう祭り(2013 クス クルミ)
今年の最新作?顔を近づけると木の香りがしました。

鮭を食べる熊(2009)
鮭を加える熊なんだけど、胴から後ろがカットされたように無い作品。アプローチが現代的で面白い。

マタギシリーズ1~4
タミヤのジオラマ的な作り。デフォルメしつつも細部まで作り込まれたマタギ達がかわいい。ストーリー性があって勝手に想像が膨らみます。

鹿を襲う狼(1978)
鹿を襲う熊(1978)
どちらも襲われているのは鹿というやられっぱなしな鹿さん。
狼の方はスピード感と躍動感、熊の方はパワーがあります。意外にも熊が木の枝から飛びついてたんだけど、実際にもああいうことするのかなぁ。

貝澤幸司

イクパスイ(2012)
さっきのイクパスイのところで書いたけど、これはもうデザインと装飾技術の作品と思われます。実際の儀式に向いているとは思えないくらい精密に彫り込まれた作品。一目で手が込んでいることがわかるし、カッコいい。いわゆる男の子的な格好良さ。

貝澤徹

ニンニルケッポ(ホタル 2010)
50cmくらいの巨大蛍。甲殻にアイヌ文様が入っているという今風な作品。しかもお尻の部分にはLEDが仕込まれておりピカピカ光ってました。それいらないと思うんだけど。

ハンクチョッチャ(トンボ 2008)
これも50cmくらいのトンボ。こちらは広げた羽にアイヌ文様。怖い。ちょっとした宮崎駿ワールド。

ヤオシケプ(蜘蛛 2011)
これも怖い。というか、怖さの先にある宗教観が見え隠れ。なんというか、仏教的な気持ちになりました。

その他

iPhoneのケースだったり、G-shockの外装だったりもありつつ。

まとめ

行く前はどちらかというと古いものばかりが集められた「博物館」のようなものを想像していました。が、思っていたよりもずっと作品に多様性があって楽しめました。ジャンルも時系列も幅広く、最後まで飽きずに見ることができたなぁと思います。
北海道に住む僕としては、アイヌアートはなんやかんやで割と目にする機会はあるけれど、こういった歴史的な背景を大切にしつつ、もっと積極的にかつ効果的に使うことで、より広く、良い意味で世界からアイヌへの注目が集まればいいなぁと思った次第。

美術館の後は例によってD&DEPARTMENTをウロウロと。妻がJAL(旧ロゴ)のスプーンを買ってました。

コメントを残してみる

コメント