非日常もやがて日常。日常こそ非日常。

一昨年オーストラリアにいた頃の写真をみてると

つくづくそう痛感する。

実は旅に出る前からそうとう気をつけるようにしていたのに。

結局駄目だったなぁと。

僕はよくも悪くも馴染むのが早い、わりと。

周りの環境には慣れる。

善くも悪くも。

最初の罪悪感はやがて薄れるし、

最初の興奮もやがては失せる。

貴重な景色はありふれたものになり、

音も、光も、匂いも、いつでもそこにあるものと思い始める。

「慣れ」た瞬間にそこは日常になる。

後にその景色がどれだけ輝くか理解できないままに

いろんなものが通り過ぎる。

そして後になってそれに気がつく。

途中からそういう生活をしていこうと意識的に思ってた部分も

あったにはあった。

現地に溶け込んでみたかったのだ。

それを意識的に日常にしたかった。

ビジターではなく、ネイティブになってみたかった。

そこにいる自分を「当たり前」にしてみたかった。

それがその時にしか出来ない事だと思った。

たしかにそうだったと思うし、今でもそう思う。

でもそれを日常にする傍らで、それは非日常でもあることを

常に脳の片隅におくことが必要だったと思う。

日常はいつか非日常になるのだ。

コールスのどでかいショッピングカートも、ビールの味も、信号の音も、広い道路も、巻きたばこも、スコールも。

当たり前だった日常は、もはや遥か時空の彼方である。

あのころの写真を見てると、

「自分の感覚がいかに狂ってたのか」

がよくわかる。

なんせ、今みると「よくわからん」のだ。

当時の自分の目には

何が珍しくて、何が当たり前に映っていたのか。

へんてこりんな物ばかり撮ってる自分。

あのころの僕が「おもしろい」と思って撮っている写真。

まぁ、悪くはないが、

それよりも

今の僕が見たいのは

あの頃の「当たり前の風景」だった。

つまり日常。

あのころの日常は今じゃ非日常。

それを見たい。

それが一番だった。

出発前はそのポイントを外さないように気をつけていたつもりだったのに。

毎日は日常で、三秒後にはそれは非日常になる。

それはもはや取り戻せない「一人称で見る教室の風景」のようなもの。

非日常を求めるならばまず日常を活きる。

未来の自分はそんな過去の日常(その時には既に非日常)

を懐かしく思うと同時に誇りに思う。

と思うのだ。

「あのころは良かった」的に。

毎朝やってくる新しい日常を大切に、元気に、満足に、後悔無く生きる。

ということか、

長々と書いたのに、意外に仏教っぽい結論で

我ながらがっかりしながらも、

やっぱりそういうものなのかなぁ

とも思う。

いいじゃないですか、

今まで全ての時間が

「あの頃は良かった」

だったら。

そしてこれからの時間も

これまたさらに先の自分がそれを振り返って

「この頃も良かった」

なんて言ったら。

やっぱりそういうことなんだ。

2個のコメントあるよ

  1. 初めまして。だいぶ前の記事みたいですが、思わず自分の感情と照らし合わせしまって… 気持ちが高ぶってメッセージを書きたくなりました。

    自分もまさに同じようなタイプでこの文章の内容が手のひらにとるように感じます。

    今は何されているのですか?私もそのような気持ちでワーホリ生活をし、努力と叶わぬスランプ 色々な気持ちで1年終えました。その後ローカルと絡みたいここを存分楽しみたい!っと思った結果、今はここで結婚し、シドニーでまた何気ない日常を送ってます。これが理想だったのに今の現実では当たり前になっています。

  2. >ケイティさん
    うおー、まさかこんな古い記事にコメントいただけるとは。
    自分もひさしぶりに自分の記事を見直す機会をいただけました。ありがとう。

    今は日本で働いています。
    ワーホリ当時は想像もしなかったですが結婚もしましたし、子供もいます。
    帰国して6年ほど経過していますが、当時の思い出は相変わらず色褪せない記憶のまま残っています。

    ケイティさんは日常を大切にしていますか?
    僕も自分の記事を読んで改めて毎日を大事にしようと思いました。
    どうした当時の僕。ずいぶんと生意気なこと言ってるじゃねーか、と。
    日本は日本で急がし過ぎて、自分のことを振り返る間もなく、時間は過ぎ去って生きます。
    オーストラリアはオーストラリアで周りが穏やかに過ぎ去っていくものだから、その心地よさに流されてあっという間に毎日が終わってゆきます。
    どっちもどっちですね。
    後になってから振り返って何かが残っているような毎日を送れるようにすれば良いのかなぁと思います。
    昨日より今日、今日より明日の自分です。

    お、どうした、ビール飲みすぎたか?
    調子に乗っているようなので、この辺で筆を置きます。

    コチラは日本、そちらはシドニー、なかなか離れてますが互いに毎日を楽しんでまいりましょう。

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