大原美術館展|札幌近代美術館

今週末で終わっちゃうので日曜日に半ば焦った感じで友人と行ってきました。
いくつかの作品についてメモが残っていたのでそれを見返しつつ絵を思い出しながら感想を残しておきます。

西洋絵画

■積みわら/モネ
有名なやつ。光の流れを細かい筆のタッチで表現しており、観ていて飽きない作品。観れば観るほどすごいなぁと思う。

■泉による女/ルノワール
ふわっとした女性らしい優しさ全開。しかし「このモデル、たぶん筋肉質だぜ」との友人コメントあり。正直に言うと女性の裸体を描いたこの手の作品はあまり好きではありません。よくある「肌と空間の境界がぼんやりとしてる表現技法」が苦手なのだと思います。ソフトフォーカス的な。どうしても「きちっとしてよ、きちっと!」と思ってしまいます。いや、完全な好みの話ですが。

■小さきクレオパトラ/ジャクリーヌ・マルヴァル
完全にグラフィックデザイン。絵としては特段好きではないのだけど、この時代にこういう表現の仕方をしてみた、というところに絵画の自由を感じます。

■幼児のはなをかむ若き母/ジョルジュ・デスパニャ
お母さんに甘えて鼻を「くっ」と差し出している幼児の愛らしさにノックダウン

■エトルター海の断崖/マティス
この海岸は画家界の間では有名らしく、モネやクールベもこのエトルタ海岸を描いてるらしい。けど、マティスは海岸よりもその手前の浜周辺を中心に構図を取っていて、しかも僕には理解できないべた塗りタッチ。「ちょっとわからん」という僕自身わからないメモが残されていました。

■コップと瓶/ホアン・グリス
もう単なる平面構成デザイン。計算してるのか感性で描いているのかだけで良いから教えて欲しい。

■座る裸婦/ジョルジュ・ブラック
キュビズム全開。この概念がすごい。

■パリ郊外ーサン=ドニ/モーリス・ユトリロ
中学の美術図録を観て以来、ユトリロは好きです。2~3メートル位離れたところから観ると本当に素晴らしい。
いろんな画風がある作品展のこういうところで目が引かれる度に「あぁ、僕は完全に写実派が好きなんだな」と実感します。ユトリロの絵に良くある、厚くてちょっと重たさも感じられる空気感の中に必ずといって良いほど存在する白い建物がホッとさせてくれます。

■静物/アンドレ・ドラン
これぞ油彩というチョコレートばりのべた塗り

■静物/モーリス・ド・ブラマンク
一方の水彩的静物画。すごいのだろうけど、好みではありません。ドランの静物画との比較のためだけに隣に置いたのではと思われる配置。

日本の近代洋画

■凝視/児島虎次郎
タイトル通りモデルがキリッとこちらを凝視する一枚。過去と未来、かつてこの絵を見た人、これからみる人がこの絵から受けるエネルギーを電力に転換できれば、小さな街の消費電力くらいは賄えそうなくらい強いエネルギーを発しています。

■サーシャ/山本鼎(かなえ)
一周目に観たときはわからなかったけど、二週目にちょっと離れたところから観たときに良さがわかりました。強い明暗差が遠く離れたところからみた時に活きてきて、とても立体感溢れる作品に化けました。初見はただの少年(サーシャ)でしたが、二回目は意思のある元気な少年がそこにいました。

■竹窓裸婦/梅原龍三郎
いくら竹林ごしの光を受けてたとはいえ、ここまで緑にはならないだろう。と観る人全員がツッコミたくなる一枚

■静物−赤りんご三個、茶碗、ブリキ罐、匙/岸田劉生(りゅうせい)
今回の展示の中で一番のお気に入り。パキッとしてて、カチッとしてて、いかにも「描き上げた」という印象。日本っぽいカビ臭さが漂ってきそうな一枚。ブリキ罐から匙につながる金属部分のハイライトがたまらない。

■陽の死んだ日/熊谷守一
息子さんが死んだ日に、亡がらを目の前にして描いたという一枚。悲しみとも怒りともわからない、強烈な想いがキャンバスの上に炸裂していました。最初観た時に「あ、カッコいいな」と感じた強いエネルギーが実は「負のエネルギー」であろうことがわかったとき、ちょっと背筋がゾクッとしました。

■信仰の悲しみ/関根正二
ネガティブな感情を架空のモデル(数人の女性)にぶつけてるようでいやーな気持ちになりました。

■靴屋/前田寛治
ぱっとみて「この絵のタイトルって『靴屋』じゃね?」って思ったら本当にそうだったのでびっくり。ま、明らかにはモデルの背後に靴が並んでて、靴屋以外の何者でもないんですけどね。安易といえば安易。

■笛吹き/中山巍(たかし)
これも遠くから観ないとわからない一枚。近くでみても拡大して色づけした古い漫画の一コマみたいでした。作品との距離感は大事。特に荒めのタッチでサイズの大きな絵画。

■梳(くしけ)ずる女/林武
絵画というか、近代グラフィック的な作品。その境目ってなんなんだろう。

■深海の情景/古賀春江
宗教画のような感じ。仏教的な概念かなんか

■川沿いの家/鳥海青児
名前からして海沿いの家かと思ったら川沿いで、「川かいっ!」と思った。

■腕/高村光太郎
これは絵画じゃなくてブロンズ。他にもブロンズ作品はいくつかあったんだけど、幼少期にこういう作品をもっとたくさんみていたら、美術の授業で粘土をやるときのアプローチは全然違ってたと思った。ディテールよりも肉感や筋肉の強さや流れみたいなものが大切だね。

現代美術

■作品、または絵画/ヴォルス
なんかアメリカくせーなー、と思ったけどドイツ人でした。ペンかなにか落書き的イラストの上から全く関係のない平面構成で着色。面白いとか、そういった類の評価。

■青と赤/ジョルジュ・マチウ
作品横の作品・作者解説ではまだ没年が記載されていなかった数少ない画家だったので印象に残っていたのだけれど、今年6月10日に91歳で亡くなったマチウ。つまりこの展示会の会期中の出来事。帰宅後に作者の事を調べてたらそれが分かりました。この作品は彼が30歳の時に描いた作品。当時の勢いや爆発力が端的に表されています。

■マリリン・モンロー/アンディ・ウォーホル
今回の展示作品の中で多分一番有名。

■眠りやがれ、ベイビー!/ロイ・リキテンスタイン
こちらもポップアートでは有名な人。

■赤壁/白髪一雄
キャンバスに勢い良く塗ったくる系の絵なんだけど、エネルギー感だけじゃなくて優しさや安定、日本人的な調和も同時に存在する不思議な絵。ただしこの巨大なサイズだからこそそれが伝わるんだと思う。小さくなったり、印刷物になったりすると途端に「ガガッと描いてみました」というような絵になると思う。

■白い円/吉原治良
レプリカを床の間に置きたいという主婦続出間違い無しな一枚。日本人なら嫌いという人はいないのではないかという絵。

■No.RED.Z.A./草間弥生
草間弥生の絵があるということは事前に分かっていたので5m先からでも「あ、あれだな」と気がつく。
特にコメントは無し。家にもいらない。でも精神や細胞に直接訴えかけてくるような感じはいつも通り。

■倉敷金比羅圖/山口晃
描き始める前はわくわくして、描き始めたらメンドクサ過ぎて激しく後悔して、完成したらビールが旨かったんだろうなぁと思う。

全体を通しての感想

絵画自体も当然すばらしいんだけど、それと同時に、それぞれの画家が表現する「写実的」ということ以外の価値観をちゃんと理解して評価できる「画家と絵画を取り囲む社会や文化の質」の素晴らしさがあってのことだな、と絵画をみながらふと考えました。
例えばパトロン、例えば作品にお金を出す人々、そういった周りの環境がなければ絵画を書く事でご飯にありつくというプロフェッショナル画家という職業は存在し得ないわけで、そんな環境を提供できる状況自体が素晴らしいものだと思います。
経済最優先、文化や娯楽よりも先にやることがあるだろうという風潮がどうも長い間続いている日本において今後もこういう作品が生まれる余地はあるのだろうかとふと思ってしまいます。
古くから伝わる素敵な文化がたくさんあるこの国だけれども、継ぎ手がいなくなってしまったり、先輩達が残してくれた物ばかりで、今の時代に新しく生まれた「引き継ぐ価値のある文化」ってあるのかな、と思ってしまいます。

ちなみにどうでもいいけどこういう展示会の後の図録は買わない派です。多分見返すことはないので。
もひとつちなみに、見終わったらまだ明るかったので、明るいうちから串鳥で焼き鳥食べてビール飲んで帰ってきました。
さらにもひとつちなみに、友人はまんまと創作意欲を刺激されてさっそく大丸藤井セントラルで画材を購入していました。僕はその間、ロットリングとステッドラー、どちらのシャープが使いやすいかをずっと試し書きしていました。

コメントを残してみる

コメント