ま、いんじゃないの|ステルスマーケティング

最近ステルスマーケティング(ステマ)の問題がちょっと賑わっているようです。

ステルスとは

ステルス(stealth)とは「こっそり、とか検知されない(させない)」って意味で、代表的なところでは軍事用語で相手の「レーダーに捕捉されない技術」であったり、身近なところでは多くのご家庭にある無線LANにおいて、通常の無線子機が見つけることのできない無線ネットワーク(暗号化や接続制限ではなく、そもそも存在を「見つけられない」)のことを指したりします。

じゃぁ、ステルスマーケティングとは

で、そんな感じで商品のマーケティングをやってるのがステルスマーケティング。
例えばブログで特定商品を褒めちぎる。お金を貰って書いてるにも関わらず、それは言わずに「たまたま使ってみたのだけれど、あまりに良い商品だから是非皆さんにもご紹介したい」的に。意外にも有名人だけじゃなくてその辺の主婦がやっている場合もあったりします。あ、主婦同士のネットワークは甘く見てはいけません。仲間内で一目置かれてる奥さんが「YES」と言えばそれが全員の「YES」となったりします。また、「私は使ってないからよく分からないけど、どうやら○○は良いみたいよ、奥さん」が3回連鎖すれば「○○ってすごく良いのよ!ホントにびっくりしちゃうわ!」に早変わりします。実際には誰も試してないにも関わらず、です。また、有名人の宣伝はあきらかにお金がらみだと想像できても、一般の主婦がそういったことに関わっているとはなかなか思われないものです。

また、最近ホットな話題として挙がってるのは飲食店評価サイトの書き込み。「特定店舗の宣伝を請け負った業者」が、あたかもそのお店で食べてきた一般人になりすまして飲食店クチコミ系SNSにそのお店を詳細にレポート。オススメメニューや料金などをもりもりと書き込んでいっちょあがり、というやつ。僕自身も新しいお店に行く時はそいうサイトを見ることも多いので、もしかしたらステルスマーケティングのお世話になっているケースもあるやもしれません。
今日はこっちの話についてもう少し考えてみることにします。

みんなが考えるSNSのカタチ

で、そのステマがけしからん!という話で世間は盛り上がっています。
まぁ、気持ちもわかります。「どこかの誰かの善意の情報」が連なって一つの大きなデータベースとなる、というのが多くの人が考えるSNSのカタチであり、そういった方々は、その中に「特定の商品やお店に人を集めるような意図」をもった情報が入り込むと全ての情報の信憑性が低下すると感じるからです。
「誰かの素直な感想」か、「お金を貰って無条件に褒めてる業者のコメント」かを見分けるのはなかなか難しいですからね。

でも、ちょっとまってください。そのけしからんと怒っている人たちは一体何に対して怒っているのでしょうか。
参考にした情報が「実はお金が絡んでいる(かもしれない)」という事にでしょうか、それとも「その情報を元にサービス(モノやお店の食事)を購入して失敗した」と感じた事にでしょうか。

怒りの矛先その1.広告であることを隠している事

参考にした情報が「実はお金が絡んでいる(かもしれない)」という場合、果たしてその情報を元にそのサービスを購入してうまくいった時にも同じく怒るでしょうか。「情報どおりすごく美味しかった!」「情報どおりニキビが直った!」時、果たして正義感という名の下に「しかしステマはステマ!だから許さん!」となるでしょうか。僕にはそうは思えません。人間、上手くいけばそれで良いのです。その情報を上手く見つけた自分の運の良さ、場合によっては自分の情報強者力を自我自賛し、場合によってはドヤ顔で他人に経験談を語り始めかねません。
そしてそういう人に限って失敗した時はここぞとばかりに情報を攻め立てます。時にはステマという枠を超えてSNS自体を全否定し、怒りをあらわにするのです。
つまり、最初から「広告であることを隠している事」自体に怒りを感じているというケースはもう少し掘り下げると実はそうではなくて「情報の内容が事実と異なっており、自分が被害を被った」という事に腹を立てている場合が多いことが分かります。
ちょっと脱線しますが、「広告であることをたくみに隠しながら広告する」手法はテレビや映画でも頻繁に使われています。それは「プロダクトプレイスメント(PP)」と呼ばれ、撮影小物や演者の衣装、口にするものなどの選定時にスポンサーを集める方法です。最近はあまりテレビ観てないので分かりませんが、昔のドラマでキムタクが着用した茶色いダウンジャケットがバカ売れしたもPPですし、アメリカのドラマや映画でアップル製品が頻繁に使われてるのもPPです。
また、そもそも「広告の定義」という疑問もあります。「お金が発生すれば広告」でしょうか?お店の身内が無償で書いた贔屓コメントはセーフでしょうか?その場の雰囲気で本人が意識していないところで肩入れしてしまう場合だってあります。常に公平なコメントを書くのはとても難しい。そう考えると広告コメントと普通のコメントの境目というのはグラデーションになっており、明確なラインというのは人によって判断が異なる場合があるのかもしれません。

怒りの矛先その2.その情報を元にサービス(モノやお店の食事)を購入して失敗した

「情報と違って全然美味しくなかった!」「情報と違ってニキビが直らない!」といった場合、果たして参考にした情報に対して怒りを感じるでしょうか。それよりもサービスそのものやサービスの提供者(飲食店や販売メーカー)に対する不満が大半を占めるはずで、(ステルスかもしれない)情報というのはあくまで参考だったのではないでしょうか?そう、マーケティングの情報はあくまで「参考」であり、「判断材料の一つ」、あるいは「(商品や飲食店という)サービスの存在を知るきっかけ」にしか過ぎないのです。で、その情報を元にして行動し上手くいったら何も言わない。だって人間だもん。問題は失敗したとき。
「ある情報を元に行動して上手くいかなかった」場合、「ステマじゃないの?騙された!」と疑い始めます。人間はどこかに責任を見つけ出したいものですから。
そこで問題。その情報がステマではなくて「一般の方」が投稿したコメントだったらどうでしょう?一般の方のコメントはあくまで善意のコメントであり、その内容が実際と異なっていても無罪でしょうか。それはおかしいですよね。もし「情報と違う結果になった」ことに怒りを感じるのであれば、その情報発信者の素性に関わらず、それが「代理店業者」であっても「一般の方」であっても怒らなければ話は矛盾します。つまり「ステマ」に対して怒るのではなく、SNS自体に存在する全ての情報の不確かさに対して怒るべきなのです。そしてそれはつまるところ「Webが玉石混合の情報を併せ持つメディア」であることを理解していないと言い換えることができます。情報の精査なく広い間口で情報を集められるのがWebの特性の一つであり、最終判断がユーザーに委ねられているという事を理解せねばなりません。「一般の方」はお金を貰っているわけでも、義務感から書いているわけでもありません。楽しいお酒を飲んでいる時、デートで食事中に痴話喧嘩なった時、たまたまお店のスタッフがミスをしてしまい、それがどうにも癇に障った時、その時の気分で細かい思考を通さずに思い思いにコメントを書き込みます。それは全く悪いことではありませんが、その評価が必ずしもそのお店の適正な評価であるとは限らないのです。それがSNSなのです。

特性を理解して使うか、いやなら使わないか

いきなり極論になりますが、結局のところコメントをひとつひとつ見ていって、ステマかどうかの判断なんてできないわけです。どのコメントにお金が動いているのかなんて分からない。
であれば、あとは内容を自分で判断しながら自己責任の上で利用を継続するか、利用を止めるかのどちらかになるわけです。昔のように店舗外観や雰囲気から自分で判断してお店に行くという昔ながらの勝負手法ですね。これはこれですごくエキサイティングだし、美味しいお店を見つけたときには歓びもひとしおです。僕は数年前にこのやり方で以前の家の近所に美味しい焼き鳥屋を見つけて、引越し後も定期的に通っています。決して綺麗な外観というわけではありませんが、友人と緊張しながらそのお店に入ったドキドキ感を今でも覚えています。この手のサービスが出る前はそういう事が当たり前だったし、それはそれでまた良いものですよね。
また、サイト運営側で不正を減らすということであればシステムそのものを変更するという方法もあります。情報の発信者別に発信情報数を表示できるようにしたりポイント付与システムを導入したりして発信した情報数や周りからの評価ポイント数でその情報の正確性を担保するようにしたりとかね。でも結局いたちごっこでその辺はさくら使えばどうにでもなるから直ぐに陳腐化するのは目に見えてるけど。

一方の僕はといえば

僕は飲食店SNS「話半分」で利用しています。情報と違うときもあるし、情報どおりのときもある。
コメント投稿者が僕と同じ感性を持っているとは限らないので彼らが美味しいと感じたものが僕も美味しいと感じる保証はないし、逆も然りなのは当たり前。
なので、利用する時は営業時間や定休日、連絡先を調べる、あとは店内写真からお店の雰囲気をチェックするくらいにしか使いません。後、宴会コースメニューの内容チェック。
料理の写真なんてあてにならないことは大人なら分かりますよね。
学生の頃はよく騙されましたが(笑)。

ついでに

ただ2つほど言えることがあるとすれば、ステマは「臭い」ます。なんとなーくですが、文章や説明内容から「押しの強さ」が感じられます。これは感覚なので僕自身にも「これは○○だからステマである」という証明はできません。感じるだけです。
あと、仮にステマという手法が行われており、月に10万とか20万とかの広告費を飲食店が支払っているのであれば、その予算でホールや厨房のスタッフを一人でも多く雇い、今よりオーダーを早く捌いたり、今よりお客様への気配りに配慮したほうが中長期的なお店の利益に繋がるんじゃないかな、と思うのです。

コメントいっこ

  1. [...] 僕が働いている会社にとっての某同業他社に話題のステマ(もう下火?)らしきものを発見したフジカワです、こんにちは。「ステマってなんぞや?」という方はこちらの過去エントリからどうぞ。 「らしき」というのは確たる証拠がないから。 ちゃんと調べればわかるのかもですが、そんな時間はないし、そこまでして僕が得られるメリットもない。確たる証拠を掴んだところでそれを公表する気も無い。もう一度言うけど僕がそれで得られるメリットはほとんどないもの。 [...]

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