照明から音楽が降ってくる|ソニー LED電球スピーカー LSPX-100E26J

最近になって今使っているベルトが「切ることで長さ調整できる」ことを知ったフジカワです、こんにちは。ポンチ買ってきてハンマーで叩いて穴を空けた昔の僕にそっと教えてあげたい。

電球とスピーカーが一体化

さて、一部ではすでに大盛り上がりのソニー LED電球スピーカー「LSPX-100E26J」です。

ひとことでいうと
「LED照明とスピーカーが一体化し、照明から光と一緒に音も降り注ぐ」
そんなプロダクトですね。

もちろん音源はスマホでOK。
さらに専用アプリで照明の調光もできちゃいます。
これならベッドにもぐりこんだ後からゆっくりと照明を落とせます。
暗い中をベッドに向かい、タンスの角に小指でローキックをお見舞いする危険もなくなります。
なんという素敵アイテム。

ある意味では正常な進化のプロセス

なんだか斬新なコンセプトのような気もしますが、その一方で個人的には「やっと製品化されたか」という思いもあります。
もちろん製品化にあたっては小型化や無線化、コストの問題など、技術的に乗り越える課題はてんこ盛りだったと思いますが、「照明」「スピーカー」という二つの機能ははるか昔から存在していた機能で、特段に目新しいものではありません。

僕が好きなプロダクトデザイナーの一人である深澤直人さんが、著書『デザインの輪郭』の中で「全てのモノは壁(or人)に寄っていく」というようなことを書いています。
人の生活と密接に関わりをもつプロダクト、特に家電(白・黒)はその存在を消すように、また、生活の邪魔にならないように、どんどん壁に寄っていきます。テレビはどんどん薄くなり、壁そのものにすらなっています。「あって当たり前」のモノはその存在を主張する必要はなく、機能だけを提供すればよいからです。
その流れからするとオーディオ製品が壁に寄り、天井にぶら下がり、そのうえ、すでに吊るされている照明と一体化するという進化の方向性は、日本人お得意の小型化・一体化の結果と考えれば至極自然な帰結です。

ちなみにコンピューターは、電話だったり時計だったり、果てはメガネという体(てい)で、どんどん人間側に寄っていってますね。僕は先日、数年振りに東京に遊びに行ってきたのですが、VRで道案内してくれるGoogleグラスがあれば本当に最高だったと思います(訳:道に迷った)

体験そのものがデザイン

とはいえやっぱりこの製品は魅力的だと思います。それは「自宅で天井から音楽が降り注ぐ」という新しい体験をユーザーにもたらしてくれるからです。
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・ソファーでごろごろしながら全身に音楽を浴びる。
・自宅のダイニングに降り注ぐ音楽を聴きながらおいしい食事とお酒を楽しむ。
・ベッドに入ってチルアウトを聴きながら、そのまま消灯して爆睡。
・ベッドに入って英語学習教材を聴こうとして、一瞬で寝落ち。

今までの機材ではスペース的にも手間的にも制限のあったことを、いとも簡単に実現してくれます。

プロダクトデザイン的な観点よりも、これはもう「体験そのもの」をデザインした商品だなぁと思うのです。

スペックより体験

もちろん分野によりますが、スペックが頭打ち、もしくは多くの購入者達にとって性能差が分かりにくい領域に達した製品は、ハイスペック勝負をするよりも今までとは異なる利用シーンの提案、その結果として得られる新しい体験を価値にした方が喜ぶ人が多いんじゃないかと思います。
GoProは小型・防塵・防水機能によるエクストリーム撮影という体験を、RICOH THETAは全天球撮影という体験を、多少画質が落ちても手軽に体験できるように開発されて大ヒットしています。
カメラという商品機能の本質としては「精細な画質」にこだわりたいところでしょう。技術的にすぐれたメーカーならなおさらです。
しかし「ユーザーが求めている」「お金を払う価値がある」と感じるはもしかしたらそこじゃないかもしれないですよね。僕なら新しく買い直すほどの違いと価値を感じられない既存製品のハイスペック後継機よりも今までとは違う楽しみ方ができる製品の方を選びます。
部屋からオーディオ装置が消え、電源ケーブルやらスピーカーケーブルやらが消える。そして部屋がまた一つスッキリする。それも一つの価値だと捉える人も少なくないでしょう。ペットを飼っていてケーブルを噛まれて困っているご家庭、小さなお子さんがいていたずらしちゃうご家庭なんかはそう感じるかもしれません。ハウスダストが苦手で、掃除機を頻繁に掛ける人とかね。

9人に叩かれても1人が大喜びしてくれれば良い

もちろんGoProやTHETAと一緒で、このLED電球スピーカーは本質的機能はハイレゾオーディオよりも劣るでしょう。でも、万人が最高の音質を求めているわけではないのです。価値の多様化に伴い「何を良しとするか」は人ぞれぞれ異なる時代になりました。
本質的価値を見失うのはもちろんよろしくありませんが、それだけに囚われずにもっと多様な楽しみ方・活用の仕方に目を向けてみるのもある製品分野をブレイクスルーする一つの方法なのかなと思います。
叩かれることを減らすために尖った部分を丸くした商品は、消費者の購買意欲に刺さらない時代になってきました。
「9人に叩かれても1人が大喜びしてくれれば良い。」そんな考え方で商品開発をすれば、もしかしたらその1人が新しいユーザーを連れてきてくれるかもしれまんしね。

まとめ

話がまとまらないまま無理やりまとめますが、
・恐らくこの製品の音質は万人を満足させるハイスペックなものではない(照明のスペックは良く分からない)
・しかしこの商品はそもそも音質を価値の主眼に置いている商品ではない。
・それでも別のところに価値を見出す人は確かにいて、
・それは意外に多いかもしれない。
・ということを市場で実験していくことが新しい製品開発、マーケット開拓のヒントになるかもね。
というお話でした。

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